当研究所の催眠療法、心理療法

当研究所で行っている催眠心理療法は、
(1)催眠療法(2)カウンセリング(3)精神分析
の三つに分かれます。

(1)催眠療法

催眠療法心理学と精神医学に立脚した科学的な療法です。魔術でもなければ見世物的な興味本位のものでもありません。また、宗教とも何ら関係のあるものでもありません。現在ある殆ど全ての心理療法の技法は、この催眠から分岐したものといっても過言ではありません。その歴史はかなり古く、いつの時代も「病と癒し」という実際の臨床の場で使われ、研究、応用されてきました。

しかし近代に入って、深層心理学や臨床心理学という学問の分野が認知されるまで、「科学的でない」という理由で敬遠されていたこともありました。現在ではその特性を利用して、神経科や心療内科では自律訓練法、産婦人科では無痛分娩、歯科では無痛抜歯などに利用され、多くの実績を残しています。

人間は誰でも暗示に反応する性質を持ちます。TVのCMで、モデルさんがいかにもおいしそうにコーラを飲み干す姿を見ていると、それまでは全然飲みたくもなかったのに、急にコーラが飲みたくなってしまったり、ヤクザ映画を見た後、無意識のうちに肩をいからせて歩いてしまったり……。これを被暗示性といいます。この被暗示性が非常に亢進した状態が催眠状態です。この状態を利用して無意識(潜在意識)の領域に働きかけ、克服していくのが催眠暗示療法です。

また催眠中に無意識の領域に抑圧していたさまざまな記憶や感情を想起させ、悩みや症状の原因を探ることを催眠分析、その情動を発散させることを催眠浄化法(カタルシス)といいます。催眠中にイメージの中で不安と対峙し、その不安を少しずつ軽減させる方法を系統的脱感作とよびます。その他催眠には色々な技法がありますが、催眠状態とは心身が弛緩し、種々の防衛が取り除かれた、いわゆるストレスの少ない状態ですから、人間の恒常性(ホメオスターシス)つまり自然治癒力の高まりが期待されます。心身が健康な状態に調整されるわけです。その意味で当研究所での催眠治療を"調整"と呼んでいます。

よりよい催眠状態に入るには、心や身体の緊張を取り除き、ゆったりとした気持ちで誘導者の言葉に耳を傾け、心を注いで、素直に暗示を受け入れることです。初めのうちは、このリラックスと集中の訓練が主になります。やがてその状態が深まると、そうしようと何の努力もしなくても、暗示どおりの現象が現れてきます。そのためには、催眠療法を受けるための十分な動機付け(モチベーション)と治療者との深い信頼関係(ラポール)、そして催眠に対する正しい理解がどうしても必要です。これを催眠の三条件と呼びます。

催眠状態(トランス)とは眠ってしまって何も判らなくなることではありません。ただ、眠気が差して、うっとりとした気持ちの良い状態です。どんなに催眠に深く入っても、人が何を言っているか、自分が何をしているかは全て分かっています。すなわち、意識の能動性が低下しているために無意識の力に任せている状態です。この点で自分が催眠に入ったという自覚が持てない方が多いようです。TVの催眠術などを見ていると、何も判らなくなってしまったように見えてしまいます。しかし、どんな催眠の状態でも意識は残っているのです。意識がなくなってしまったら、それは睡眠の状態です。
 また、催眠状態といっても、その方の絶対に受け入れたくない暗示には反応しません。決して、人が人を操る道具として催眠があるわけではないのです。そういう意味で、洗脳とも区別されます。

一通りのリラックスと集中の訓練が進み、身体で催眠の状態を覚えてきたところで、今度は自己催眠の訓練をしていきます。他者催眠ばかりではどうしても治療者に対する依存性がつきやすくなります。そこで自分自身で催眠の状態に導き、自己暗示によってセルフコントロールをしていく方法を学んでいきます。これを"自己調整"といいます。その繰り返し繰り返しの自己調整を通して深い洞察を得、無意識の価値観の変化(観の転換)が起こり、無意識のものの観方、考え方、受け取り方が変わってきます。そのような過程で、自分自身に対する信頼を取り戻すことが、催眠療法の一番の目的であるといえましょう。

(2)カウンセリング

当研究所で行なう心理療法のもう一つの柱がカウンセリングです。

カウンセリングというと「アドバイスをもらう」というイメージを持つ方が多いようですが、心理療法におけるカウンセリングは治療者が「話す」ことよりも、むしろ「聴く」ことに重点を置きます。もちろん全くアドバイスをしないわけではありませんが、それよりも患者さんの気持ちを少しでも汲み取ることのほうが大事です。

正しいことが分かれば悩みや症状がなくなるのであれば、本をたくさん読めば治ってしまうことになります。しかし現実にはめったにそんなことはありません。考えても考えても堂々巡りをしてしまい、たとえ正しい答が解っていてもどうすることもできない、言わば「解っちゃいるけどやめられない」ことがほとんどです。ですから、治療者は正しい答を授けるよりも、「どこまで患者さんの気持ちを理解できるか」ということにエネルギーを注ぎます。そして、その方の話す言葉や感情のみならず、態度や仕草から無意識にまで耳を傾けようとします。

感情に善悪があるわけではありません。たとえそれが「恨み」や「憎しみ」、「怒り」のような負の感情であっても、人間である以上それを持つのは当たり前であり、それ自体に罪があるわけではありません。しかし、そのような感情を持つ『私』を何の罪悪感も持たずに許すことは、なかなか難しいことです。そんな時、その感情をさらけ出し、それを理解し受け止めてもらえる人が一人でもいたならば、それだけで心が癒されるのではないでしょうか。

カウンセリングの目的は、そのような過程の中で感情を自由に表現できるようになり、自分を許し、自己理解を深めることにあります。それは、悩みや症状を解決するのみならず、その方の心の成長を助けることでもあるのです。

(3)精神分析

かの有名なオーストリアの精神科医ジグムント・フロイトが打ち立てた無意識(潜在意識)の理論、および心理療法です。フロイトは実際の神経症治療の中で、[無意識]の領域を想定し、そのメカニズムを解明しながら精神分析の体系を作り上げました。現在の精神分析理論は古典的なフロイトの治療理論とはずいぶん違ってきましたが、それでもその基本概念は、現代の精神療法や心理療法の中に脈々と受け継がれています。

当初フロイトは、自我の防衛によって無意識の領域に抑圧された記憶や感情を意識化することで症状を除去できると考えました。実際には、無意識を意識化することだけで治癒が進むという簡単なものではありませんが、そのような「気付き」を大切にするという意味においては非常に有効です。

正統的精神分析においては自由連想法という技法を用いますが、当所では(1)クライアントの方の自我の健康状態を知るため、(2)カウンセリングにおいて共感や洞察を深めるため、(3)催眠分析(催眠中の精神分析)において、その精神分析的技法が使われます。

※当研究所の療法は、日本催眠心理研究所の療法を受け継いだものです。
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